コラム

都市における農業体験農園の経営戦略 前編(1/3)

更新日:2025年3月20日

こんにちは、山田です!
ここでは基本的に都市農家の経営などについて分析するのですが
たまには、私たちが行っている事業についての分析を話してみたいと思います。
自社の事業のひとつに【農業体験農園】というサービス事業を行っています。(以下、「体験農園」と略します)
いわゆる、利用者に畑の区画を年間通じて使ってもらうサービスで、タネや苗、道具などを、運営側で準備して指導などのサービスを提供しています。

サービスが手厚い分、似たような市民農園のサービスより単価が高くになっています。
現在、八王子にて2か所、体験農園を運営しています。
 
日々、発展をしており今年から防草シートを貼りました!

       防草シートを貼った、自社の体験農園

理由は
農園をキレイがなること と
暑い時期の草取りの労働負荷を大幅に軽減すること です。
ただ、この防草シートを貼る作業がなかなか大変作業でして
トラクターしたばかりの柔らかい土では「のれんに腕押し」で
杭が刺さり切らず、早春の強風によって何度もシートがはがれ
何度も補修する始末でした。
 
土を固めるために、鉄のローラーを購入し土を地ならし。
これは、農作業なのかと不思議な感覚を抱いていました(苦笑)

        研修生の方に引いてもらいました

今回はこの農業体験農園の都市における事業戦略について
3回に分けてお話をしていきたいと思います。

都市の体験農園の事業としての可能性は

個人的に、都市の体験農園の事業性はかなり高いと感じています。
実際にマイファームやシェア畑が、都市部のいろんな所で展開していることでも実感できるのではないでしょうか。
ただ、体験農園を始めることにいくつか気になる点があるかと思います。
・農作物を生産販売するより稼げるのか?
・体験農園はどこでも誰でも運営は可能か?
・実際にどうやって始める?初期投資はどれぐらいかかる?
などでしょうか。
 
今回は、これらの疑問におおまかですが答えてみたいと思います。
農作物を生産販売するより稼げるのか?
体験農園の収益性については、もちろん当事者の努力によって大きく変化します。
しかし理論上、反収100~300万円は可能な数字になります。
現状、私たちが運営している2つの体験農園については1反(1000㎡)あたり200万円前後の売上になっています。
より都内いけば戦略によっては1反あたりの売上が300万円以上も可能だと思っています。
都市農地では、1、2反程度の小さい農地は点在しているため、かえって体験農園は取り組みやすいものにもなります。
ちなみに自社の体験農園は、1区画(6~10㎡)あたりの年間費は3.3~5万円程度(農園によって変動)。
2区画以上借りると割安になる仕組みで、2つの農園で100組前後の契約者がいる状態です。

体験農園は、どこでも誰でも運営は可能か?

いわゆる再現可能性ともいいかえてもいいかもしれません。
これはいくつかの条件を満たす必要があります。
まずは農園の場所です。
都市部では、徒歩もしくは自転車で10~15分圏内ぐらいの農園であれば、利用者が継続して来てもらえるかと思います。
逆に住宅街から離れている場合は、臨時駐車場などを設けて対応できるかでも幅は広がります。
八王子より東にあれば、ほとんどの場合、住宅街に農地があるので、この条件は満たせるかと思います。八王子であっても過疎化した山村地域になると地理的に難しくなります。
その場合は、また体験農園とは別の観光農園などのアプローチを考える必要があります。
 
つぎに誰でもできるかという点ですが
専業農家レベルである必要はありません。
家庭菜園+αぐらいの農業知識や経験があれば、対応は可能です。
実際にマイファームやシェア畑で教えているアドバイザーの人達は、体験農園の利用者が行っている場合もあれば、市民が講習を受けてやっている場合が実際に多くいます。
そして、筆者の私も農家ではないながらも研鑽を重ねて指導ができるようになりました。
それ以外にも、設備や資材の管理のマニュアルやチェックリストがあれば、大きなミスは起きえなくなります。ただ、最初の段階では、その地域の土壌の状態や気候の特性がありますので、それを把握するレベルの農業スキルを持っている人が必要であります。
逆に専業農家のこだわりが強すぎて、作業が属人的(その人がいないと成り立たない状態)にならないよう、誰でもができる家庭菜園レベルの作業を中心に組み込んだほうが、再現性が高くなると言えます。
そういう意味では、農業の経験値が低い人でも始めやすい事業でもあります。 

実際にどうやって始める?初期投資はどれぐらいかかる?

では、体験農園をやりたい場合は、どうすればいいのか。
まず農地を持っている地主の場合、自らが運営者となり進めることができます。
農地の賃貸の場合は、農業委員会を通じて体験農園を運営する旨を伝えて承認を受けなければなりません。地域によっては、体験農園をよく思わないところもありますので地道な説明や交渉が必要になることがあります。
また始めると長期間の運営になるので、地主への説明や合意をしっかりと行うことが大事です。

以上の2つのパターンの場合、前提が農家でなければなりません。
それ以外のパターンでいえば、委託型が考えられます。
これは自社が取り入れている形で、地主が体験農園の主体者になりつつも、運営管理は別の法人や団体が受け持つやり方です。
この場合、農業委員会への提出も承認も必要が無く比較的簡単に事業を開始することができます。
ただ、売上は一度全て地主のものになり、委託費として運営している法人や団体へ支払いが行われますので、自らの農地で運営するよりも利益率が下がる点は注意が必要です。
 
次に初期投資についてです。
これも農地の環境によっても変化しますが、最低限必要なものとして、倉庫、屋根のある建物(ハウスなどで代用可能)、クワやカマなどの作業道具、支柱やヒモなどの消耗品、そしてタネや苗などが必要となります。細かく言えば、かなりの種類がありますがホームセンターで一通り用意できるものになります。

         各種クワやホー
      タネや苗、鎌、スコップなどが倉庫に

また水が必要となりますので、雨水タンク、できれば井戸水を使えるようになると安定します。
また農園の周辺にトイレがなければ簡易のトイレが必要になります。バイオトイレや仮設トイレのリースで対応することができます。
以上のようなものを揃える事ができれば、体験農園の運営が可能です。
まったくゼロの状態からでも、初期投資が100万円前後で済み、比較的簡単に始められることがメリットになります。
 
以上です!
今回は、体験農園を事業性の可能性や始めるにはどうすればいいかなどを話してみました。
次回は、体験農園の収益をあげるための経営戦略についてお話してみます。

【文責 一般社団法人畑会 代表 山田正勝】