コラム

都市における農業体験農園の経営戦略 中編(2/3)

更新日:2025年3月21日

前回は、体験農園を事業性の可能性や始めるにはどうすればいいかについて話ました。今回は、体験農園の収益性を高めるための経営戦略をお話したいと思います。

戦略①最初の集客にどれだけ力を入れられるか

まず体験農園を始めるにあたって、最初から利用者ある程度集める必要があり、集客にかなり力を入れる必要があります。
これは他の農の事業とは逆のアプローチになります。
例えば、単発の農業体験のイベントはやっていることは似ていますが、いきなり大規模で行いませんし、集客もしません。
それは単価が低く、企画の精度も低い中で、いきなり大規模にやってしまうと大赤字になる可能性があるからです。
このことは農作物の生産販売も、加工品の販売なども同じことで、まずは小規模に行い、テストマーケティングを重ねる必要があります。 

かたや体験農園については、最初から集客コストを見越して進めていく必要があります。
その理由は、少人数のまま体験農園を運営していくと大きなコストや時間を使い、大赤字になってしまいます。
前回、お伝えしたとおり体験農園で最初の設備投資や資材の購入にはコストはかかってしまいますが、一度購入してしまえば、大きな費用はかかりません。
しかし、継続してかかるコストとして利用者に指導や指示を行うスタッフの人件費がバカになりません。そんな中、利用者が3,4組しかいなければその人達ため講習会や個別対応が行わなければいけなくなり、生産して販売した方が良いと思うようになります。
体験農園の失敗の多くが、最初の集客でうまくいかずにつまずいている場合が多いです。
集客を強化するためには、地域周辺へのチラシ広告、ネット広告などを駆使しながら集めることが多いです。

戦略②継続してもらえる工夫を作っておく

体験農園の利用客の新規獲得がうまくいったならば、次に起こる課題は継続してもらえる人を増やしていくことです。
既存利用者が1年間で沢山の方が退会してしまうと、集客の問題同様で利益率が悪化が懸念されます。
またマーケティングの考えでも、新規顧客の獲得するコストの方が、既存顧客を継続してもらうコストの方が5倍もかかると言われており、そういった点でも、継続してもらうような工夫をいくつもちりばめておく必要があります。

体験農園の方 つながりがあることで継続しやすくなります

初めて体験農園に参加される方は、自ら畑を耕して新鮮で旬のおいしい野菜を健康的に食べたいというイメージを持って来て下さります。
しかし、実際には草取りが大変、思うような農作物ができない、虫食いがあって食べるのに抵抗がある、などいろんな農業の大変な現実を突きつけられてしまいます。
そのため、次の更新時期には、やはり自分には向いていないと感じ辞められていく場合も多くあります。
まずはやめてもらわないためには、しっかりと育てて収穫体験の成功体験を実感してもらう必要があります。適切な指導は当然のことながら、実際に適切な時期に適切な種をまいているかこまめにチェックして、致命的なミスが内容に個別対応を丁寧に行います。
毎月2回の講習会ももとより、それ以外でも栽培のテキストや動画を作成することで、より精度をあげていきます。
あとは利用者が挫折する鬼門としてあがるのが、真夏の暑い時期の作業。
それらの作業を低減させるために黒マルチ利用の推進や防草シートの設置なども行う。
来てもらう時間帯を朝早くか夕方遅くに徹底するなどのアドバイスを行います。
これ以外にも、継続してもらうために工夫は多くありますが、このようなことを意識して体験農園のサービスを提供していきます。

戦略③単価を上げていく

利益率をあげるためには、やはり単価を上げていく事が基本になります。
うちの八王子の農園でいえば、利用してもらう区画の広さを基準の2~3倍拡大して借りてもらっています(この戦略自体は、ある程度余っている農地がある場合に限ります)。
それ以外に言えば、オプションを増やしていくこともあります。
+αで野菜が収穫できる、イベント参加ができる、越冬するものを別で作れるエリアを作るなどのパターンがあります。
これら以外にも柔軟な発想次第で他にも湧いてくると思いますので、考えてみてはいかがでしょうか。
 
以上が体験農園の収益性を高めるための経営戦略になります。
紹介したもの以外にも他にもありますが、少なくとも上記の3つは最低限、おさえておく必要になる部分です。
 
これから、体験農園を運営されたい方は、事前に戦略を練っていくことをおススメします。
 
次回は、体験農園の利用者のニーズの分類や変化、それらに伴う戦略について話をしていきたいと思います。