コラム

持続可能な農業公園を立ち上げた農家のお話 中編 ~ 農業ビジネスと環境保全 ~

更新日:2024年8月31日

【前回の続きの説明】
千葉県鴨川市で農業公園の事例視察に。
農地でありながら建物が立てられており子どもたちが遊べる空間が作られていました。

【SOIL TO SOUL FARM PARK】

ただ、この農業公園は無償で利用できており
収入源は、主にクラウドファンディングや寄付によるものが大きいそうです。
それなのに、持続可能な状態で進められているのはなぜなのか。
その点について、深掘りしたいと思います。
 
引き続き
農業法人【農地所有適格法人】 苗目(なえめ)の
代表の井上さんから直接、お話を伺ってきました。

田んぼから古民家まで

農業公園から車で離れた畑をご案内してもらうことに。
まず、都市の農地とはちがい山の中に畑がある風景。
いわゆる里山の空間で畑や田んぼの栽培をされています。

さらに進んでいくと、畑がありいろんな種類の作物が植えられているエリアに。

こちらは、法人との契約している畑で、定期的に会社の人達が収穫などの
一区画1月5万円で貸しているそうで、複数の会社が契約中とのこと。
普段の管理は、スタッフの方がやっているようです。
種や資材は、苗目さん側が基本、準備し負担。
いわゆる農業体験農園の法人区画版で
収益率の高いビジネスモデルになっています。
うちの体験農園より効率がよいです(苦笑)

さらに歩いていくと法人の名前を冠したにわとり小屋が。

にわとりの卵も平飼い卵として販売されています。

さらに先に進んでいくと古民家レストランが姿を現しました。

中に入ると居心地のよい空間が拡がっていました。

昔ながらの縁側。こういった日本家屋に憧れます。

古民家の奥には、加工品の商品も並んでいました。

ドライフラワーを使ったお茶やコーディアル。
海外から輸入した珍しいナッツの詰め合わせなど。
どの加工品も洗練されており見るだけでも楽しい気分になれまました。

 
そうしている間に、頼んでいた料理が到着。

ほとんどの食材が苗目さんで栽培、育成されたもの。
ハーブ野菜のサラダが独特な味で美味しくいただけました。
 
今回、井上さんに紹介していただいた農業公園、畑、田んぼ、山林。
そして古民家、食事、加工品、どれもが魅力的でフナキと
こういった世界観のある場所を作っていきたいなと盛り上がりました。
ある意味、私たちの理想が井上さんの会社には詰め込まれていました。

森林の中にある価値の再発見

食事をしながら井上さんは環境保全についてお話をしていただきました。
ただ井上さんが言う環境保全は、
行政的な画一的で事務的なものではなくSDGsのようなトレンド的なものでもありません。
また最近、導入された環境税も企業のCSR(社会的責任)活動も表面的で根本的な問題解決にならないと批判をされていました。
まったくもってその通りだと思います。
 
その中で、井上さんが取り組んでいる環境保全の方法として
【アグロフォレストリー】という考え方があります。
 
アグロフォレストリーとは、農業(Agriculture)と林業(Forestry)を組み合わせた造語で、
樹木と農作物を一緒に植え、森を管理しながら農業を行う農法のことで「森林農法」とも言われています。
 
アグロフォレストリーのメリットはいくつかあり
植物同士や生態系の相互作用によって、農薬や肥料の必要性が少ないことや
多様な植物を栽培することで自然の多様性を回復させることができるなど
栽培と環境保全の両立が可能になります。
 
デメリットとしては
一般の慣行農法に比べ効率が下がるため収量が大幅に減り
単純な生産活動では収益が確保できません。
 
アグロフォレストリーは環境保全として有効な方法ですが
マネタイズをどうするかが気になりました。
 
その中で、井上さんは森の価値を再発見することを教えてくれました。
 
一般的な山林ではスギやヒノキが多いのですが
山林には、あまり知られていない経済的価値のある木が眠っており
それを発見し販売することができると。
人工林の中にも、ケヤキやミズナラ、ヤマザクラなどの価値ある広葉樹があり
カエデからはメープルシロップがとることができるお話されていました。
そういった価値のある木を知っているかで森林の価値も変わります。
もし無ければ、価値のある木を育てることもできるとのこと。
井上さんは、近隣の森林を持つ地主さんにも森林はお金になるとお話をしているそうです。
 
結論として
【環境保全をしながら経済活動も確保することで、本当の意味での持続可能な農業が生まれる】

そんなことが井上さんのミッションであると強く感じました。
最初に紹介した農業公園も同じような考え方で進められているのだと改めて理解が深まりました。
 
長くなったので、次回も続きます。
次回は、ビジネス視点から井上さんの事業をさらに掘り下げたいと思います。

【文責】一般社団法人 畑会 代表 山田正勝